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Story
 小路が佇んでいる。
 小路の目には街が灰色に燃えている。・・・結婚式を明日に控え、結婚相手の葉子を愛する気持ちが強くなるにつれて、小路の脳裏にはあの少女が現れ、彼自身で幸せを拒絶する。落ち着きなく葉子を連れまわし、泊まることになっていたホテルを離れ、結婚後住むことになっている家に急ぐ。
 一方、OLの葉子にも秘密がある。ある思い込みが葉子を彼の心から遠ざける。しかも、結婚を前にして小路の様子がおかしい。やはり自分には人を愛することなんてできないのだ。自分が結婚するなんて何かの間違いだ、と思うようになってしまう。
 新居はそれぞれの不安、恐れ、弱さを相手にぶつけ合う逃げ場の無い舞台だ。
 彼等二人のイメージ(夢)の世界で優しく、厳しく二人を見守る存在が神秘的に現れては消える。小路と葉子はお互いが何も隠せない姿となり新居を出る。二人を待つのは別れなのか?・・・しかしそれはお互いにとって魂の死を意味するだろう。
 殺人も無い、戦争も無い。このドラマは魂の生死をかけた、静かで切実な賛美歌なのだ。
JAZZは特殊な演出で制作された ----
 役者にはシナリオを超越することが求められ、ストーリーを変更する程の自由が与えられた。撮影現場においても演技が自分の個人的な経験とされるまで変更が繰り返され、役者の創造性をそのまま焼きつけることが試みられた。同時に撮影者はその創造性に機敏に反応し、さらに撮影者の創造性を付与することが求められた。 
 つまり、役者もスタッフも撮影が終了するまでこの作品の結末を正確には知らなかった。
 映画JAZZの内容に関しては映画本編からお客さまがそれぞれ色々なことを感じるでありましょうから私がここでそれにこむずかしく付け加えることはやめて、ここではこの非常に変わった映画がどのような思いで作られたかを少しだけ書きましょう。
 JAZZは俳優のための映画です。勿論映画はお客さまのものですが、制作者、監督のための映画が多いのです。完全に否定しようとは思いませんが俳優は多くの場合、一つの駒であり何かを伝えるための道具です。が、JAZZはこれを超えようと企みました。
 人間がその人生において自分を省みる瞬間はそう多くはありません。「結婚」はその数少ない瞬間の一つです。「結婚前夜」という環境に俳優をおいて、本物の感情が生まれるのを待ちました。
 だからJAZZでの俳優の演技は彼等の実人生に大きく関わっています。嘘の混じったカット、ただリアルなだけなカットは俳優本人がOKにすることを拒否したのです。一人一人の俳優が作品にテーマを投げかけ、内容の決定に深く関わっています。かといってノリで作ったアドリブ作品ではありません。主演の二人は特に深く考え、誠実に感じておりました。

 彼等は作品の最後に結ばれることも別れることも選択できたのです。つまりこの作品は俳優を作品内容まで決定できる芸術家として迎え入れた作品です。私は参加してくれた俳優の皆さんを信じて本当に良かったと思っています。監督として伝えたいことは彼等に邪魔されるどころか撮影を通してより大きく成長しました。

 お客さまには是非とも彼等の表現を楽しんでもらいたい、と思います。共感したり引いたりしながら。人間を信ずることの難い世の中でありますが、人間は信ずるに値するものと信じます。
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